【完全比較】ヨーロッパ各国の医学部入試制度:出願ルート・試験・面接・予備コースまで
欧州医学部の入試制度を「事務局経由/大学直接出願/書類審査中心/Foundation経由」の4タイプで整理。ハンガリー・チェコ・ルーマニア・ブルガリア・スロバキア・ラトビア・マルタ・オランダ・フランスの出願ルート、試験科目、面接、予備コース、言語要件を国別に横断比較。
2026年4月27日
欧州医学部の入試は「共通テスト型」ではありません。
国・大学ごとに、出願ルート・選考方法・英語要件・面接の有無・予備コース(Foundation)の位置づけが大きく異なります。
日本から出願する場合は、ざっくり次の4タイプに分けて考えると整理しやすくなります。
- 事務局経由が主流の国
- 大学公式サイトから直接出願できる国
- 書類審査が中心の国
- 現地語やFoundation課程を前提とする国
まず結論:欧州医学部の入試制度は4タイプに分かれる
欧州医学部の入試制度は、大きく以下の4タイプに整理できます。
| タイプ | 主な国・大学 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| ① 事務局経由+入試型 | ハンガリー、チェコの一部 | 日本語対応の事務局・仲介機関を通して出願し、生物・化学・英語などの試験を受ける | 日本語で出願サポートを受けながら準備したい人 |
| ② 大学直接出願+筆記・面接型 | チェコ、ラトビア、マルタ、オランダなど | 大学公式サイトや出願ポータルから直接申請し、筆記試験・面接・志望理由書などで選考 | 自分で情報収集・書類準備を進められる人 |
| ③ 書類審査中心型 | ルーマニアの一部 | 高校成績、英語力、必要書類をもとに選考。大学によっては筆記試験や面接あり | 高校成績や英語資格を活かしたい人 |
| ④ Foundation/Pre-med 経由型 | ハンガリー、チェコ、マルタ、オランダ、フランスなど | 医学部本課程の前に、理科・語学・基礎医学を学ぶ予備課程を経由する | 理科科目や語学を補強してから医学部に進みたい人 |
ポイント:自分が「どのタイプの入試なら戦えるか」を先に決めると、国・大学選びの迷いが一気に減ります。
国別比較:出願ルート・試験・面接・予備コース
ハンガリー:HMU経由が基本。予備コースから本コースへ進むルートも一般的
ハンガリーの医学部は、日本人にとって比較的情報が整理されている国の一つです。DB内では、セゲド大学、センメルワイス大学、デブレツェン大学などが紹介されています。
日本人の出願は、原則として ハンガリー医科大学事務局(HMU) を通して進める形が中心です。セゲド大学やデブレツェン大学では、HMUを通じて予備コースまたは本コースを選んで出願する流れになっています。
センメルワイス大学の入学試験は次のとおりです。
- 筆記試験:オンライン
- 口頭試問:あり
- 試験科目:生物・化学・英語
- 試験日:複数日程が設定され、日程調整がしやすい
また、セゲド大学では医学部6年間の前に、1年間の Foundation Program があり、基礎科学、ハンガリー語、ラテン語などを履修します。ハンガリーの医学部は6年制で、英語で学べる一方、臨床実習ではハンガリー語が必要になる場面もあります。
ハンガリーのポイント
- 日本人向けの出願窓口(HMU)が比較的整っている
- 本コースと予備コースの両方を選べる
- 入試は 生物・化学・英語 が中心
- 大学によっては筆記+口頭試問
- 臨床段階では現地語の学習も重要
チェコ:CMU経由と直接出願の両方。大学ごとに試験科目が異なる
チェコは、カレル大学の複数医学部やマサリク大学など、医学部の選択肢が多い国です。DBでは、カレル大学第1医学部、第3医学部、フラデツ・クラーロヴェー校、マサリク大学が紹介されています。
カレル大学第1医学部・フラデツ・クラーロヴェー校 の出願ルートは2通り。
- チェコ医科大学事務局(CMU) を通して受験する
- 個人で大学に直接出願する
また、正規課程の前に1年間の Foundation Program があり、生物・化学・物理などの理科科目に加え、チェコ語やラテン語を学ぶルートもあります。
カレル大学第3医学部 では、大学HPから出願し、必要書類(高校卒業証明書、高校成績書、パスポートコピー)を郵送します。入試は筆記試験+面接で、筆記試験は 生物・化学 が中心です。
マサリク大学 では、個人出願と国ごとの事務局経由の2通り。入学試験は 生物・物理・化学 の3教科で、MCAT・A-level・IBの結果によっては入学試験が免除される可能性もあります。
チェコのポイント
- CMU経由と直接出願の両方がある
- カレル大学系は医学部ごとに制度が異なる
- 生物・化学に加え、物理が必要な大学 もある
- Foundation Programで理科・語学を補強できる
- 一部では筆記試験+面接
ルーマニア:大学ごとの選考差が大きい。書類中心〜筆記・面接ありまで幅広い
ルーマニアは、大学ごとの選考方法の差が大きい国です。DBでは、グリゴレ・T・ポパ医科薬科大学、ティトゥ・マイオレスク大学、ヴァシレ・ゴルディシュ西部大学などが紹介されています。
グリゴレ・T・ポパ医科薬科大学:オンライン出願 → 必要書類提出 → 書類審査で選考。入試試験は不要で、IELTS 6.5以上またはB2レベル、高校成績は最低平均6.0が目安です。
ティトゥ・マイオレスク大学 の選考プロセス:
- 書類審査
- 英語力証明(B2レベル以上)
- 入学試験:科学(生物・化学)および英語に関する筆記試験・面接
ヴァシレ・ゴルディシュ西部大学:オンライン申請後、7月・8月頃に必要書類を提出し、出願書類の審査を受けます。生物・化学の比重が高く、IELTS 5.5以上が目安。理系資格やボランティア証明書が加点材料になる可能性もあります。
ルーマニアのポイント
- 大学により「書類審査のみ」と「試験・面接あり」に分かれる
- 英語力は B2〜IELTS 6.5 程度が目安
- 高校成績、特に 生物・化学 の成績が重要
- 出願時期は春〜夏が中心
- 大学ごとの公式要項確認が必須
ブルガリア:本コースと予備コースを選べる。生物・化学のオンライン試験あり
ブルガリアのプレヴェン医科大学では、本コースと予備コースの2つの流れが示されています。
本コース(出願時期:6月〜10月頃)に必要なもの:
- 成績証明書
- 英語能力証明書(B2以上、IELTSなら5.5以上が目安)
- 学術試験:オンラインで化学・生物の選択問題と筆記問題
予備コース(Pre-medicine) は、斡旋団体の入試 → 必要書類の準備 → 2月の予備コース入学、という流れです。
ブルガリアのポイント
- 本コースは 6月〜10月 頃の出願
- 生物・化学のオンライン学術試験がある
- 英語力は B2以上 が目安
- 予備コースは別ルートで準備できる
スロバキア:オンライン出願+生物・化学の入学試験
スロバキアのコメニウス大学は、出願時期が2月〜7月頃。流れは比較的シンプルです。
- オンラインで出願登録・必要書類提出
- 高校卒業証明書・成績証明書を提出
- 生物・化学の入学試験を英語で受験
- 合格後、学費支払い・正式入学手続き
必要書類は、パスポート写し、英訳した証明書、出願料支払い証明など。
スロバキアのポイント
- オンライン出願が基本
- 生物・化学の英語試験 が中心
- 出願時期は 2月〜7月 頃
- 手続きは比較的明確だが、年度ごとの確認が必要
ラトビア:年2回入学。書類・英語力・志望理由書・推薦状・面接で選考
ラトビアのリガ・ストラディンシュ大学は、 9月入学・2月入学 の年2回の出願機会があります。大学公式ホームページからオンライン出願し、以下を提出します。
- 成績証明書
- 卒業証明書
- 英語能力証明(IELTS 6.0以上、TOEFL iBT 80以上 など)
- 志望理由書(Letter of Motivation)
- 推薦状(最低2枚)
その後、オンラインで口頭試問・面接が行われます。
ラトビアのポイント
- 年2回の入学チャンス がある
- 志望理由書と推薦状が重要
- IELTS 6.0以上、TOEFL iBT 80以上 が目安
- オンライン面接・口頭試問あり
マルタ:Foundation 2年+医学課程5年。面接あり
マルタ大学は、DB上では Foundation Studies(2年)Pre-med課程 と、その後の Faculty of Medicine & Surgery(5年)医学課程 として整理されています。
Foundation出願は3月〜7月頃、9月入学のみ。出願方法は次のとおりです。
- Admission portalから申請
- 英文卒業証明書、成績証明書、英語資格、CV、パスポートコピーを提出
- オンライン面接
必要な英語力はIELTS 5.5、TOEFL iBT 3.5以上。FoundationではAnatomy、Biochemistry、Genetics、Research Methodなどを学び、出席率や試験合格などの条件を満たすことで医学課程へ進みます。
マルタのポイント
- Foundation 2年+医学課程5年 のルート
- 9月入学のみ
- オンライン面接あり
- Foundation修了条件を満たすと医学課程へ進める
- 英語圏に近い環境で医学を学びたい人に向く
オランダ:EUC 3年+Erasmus MC 4年。英語力と面接、さらにオランダ語が鍵
オランダのエラスムス大学ロッテルダムでは、医学部本課程に直接入るのではなく、まず Erasmus University College(EUC) で3年間のPre-med課程を学び、その後、条件を満たしてErasmus MCの医学課程へ進むルートが紹介されています。
EUCの出願は10月〜5月、秋入学のみ。出願の流れは次のとおりです。
- Studielinkで申請
- 成績証明書・英語資格を提出
- モチベーションレター+面接
必要な英語力は IELTS 7.0、TOEFL iBT 100以上 と高め。Erasmus MCへ進むには、 オランダ語B2以上 やEUCでの成績などの条件が必要とされています。
オランダのポイント
- EUC 3年+Erasmus MC 4年の 長期ルート
- 英語力要件が高い
- モチベーションレターと面接が重要
- 医学課程進学には オランダ語B2以上 が必要
- PBLやCBLなど、ディスカッション型学習が多い
フランス:Campus France経由。フランス語力と初年度の成績競争が重要
フランスのカーン・ノルマンディー大学では、日本からフランスの大学に出願する場合、まず Campus France を通してオンライン申請を行います。学士課程への出願は「Études en France」システムを利用し、志望校・専攻を登録 → 書類審査・面接、と進みます。
出願には、高校または大学の成績証明書、フランス語能力試験(DELF/DALF)などが必要です。
フランスの特徴は、 「入学時点で医学部に合格する」のではなく、大学入学後の成績競争で医療系課程へ進む こと。大学1年目に LAS(医療系科目副専攻) を選択し、ランキング上位の成績を取る必要があります。
フランスのポイント
- Campus France/Études en France経由で出願
- フランス語力が必須
- 書類審査と面接がある
- 大学1年目の 成績ランキング が重要
- 医学部進学は入学後の競争要素が強い
比較表:国別の入試制度まとめ
| 国 | 主な出願ルート | 試験科目・選考 | 面接 | 予備コース |
|---|---|---|---|---|
| ハンガリー | HMU経由が中心 | 生物・化学・英語、筆記・口頭試問 | あり | Foundation Programあり |
| チェコ | CMU経由または直接出願 | 生物・化学・物理など。大学により異なる | 大学によりあり | Foundation/Pre-medあり |
| ルーマニア | 大学公式サイトから直接出願 | 書類審査中心。ただし大学により筆記・面接あり | 大学によりあり | DB上では主ルートとしての記載は限定的 |
| ブルガリア | 本コース出願または斡旋団体経由 | 化学・生物のオンライン試験 | 記載なし | Pre-medicineあり |
| スロバキア | オンライン直接出願 | 生物・化学の英語試験 | 記載なし | 記載なし |
| ラトビア | 大学公式サイトからオンライン出願 | 書類、英語資格、志望理由書、推薦状、口頭試問 | あり | 記載なし |
| マルタ | Admission portal | 書類、英語資格、CV | オンライン面接あり | Foundation Studies 2年 |
| オランダ | Studielink | 書類、英語資格、モチベーションレター | あり | EUC 3年のPre-med課程 |
| フランス | Campus France/Études en France | 書類審査、フランス語資格、大学1年目の成績競争 | あり | LASなど医療系副専攻ルート |
試験科目で見る:生物・化学はほぼ必須、物理・英語・現地語が差になる
欧州医学部の入試で最も頻出するのは、 生物と化学 です。ハンガリー、チェコ、ブルガリア、スロバキア、ルーマニアの一部など、多くの大学で生物・化学が中心になります。
そのうえで、大学によっては次のような追加要素があります。
- 物理:マサリク大学などで必要
- 英語:ハンガリー、ルーマニア、ラトビア、マルタ、オランダなどで重要
- 現地語:フランス語、オランダ語、チェコ語、ハンガリー語など
- 志望理由書・推薦状:ラトビア、オランダなどで重要
- 面接・口頭試問:ハンガリー、チェコ第3医学部、ラトビア、マルタ、オランダ、フランスなどで見られる
注意したいポイント:英語プログラムであっても、臨床実習では現地語が必要になるケースがあります。
- ハンガリー → 患者対応のため ハンガリー語
- オランダ → Erasmus MC進学に オランダ語B2
- フランス → 出願段階から フランス語力
面接で見られやすいポイント
DBに記載されている範囲では、面接や口頭試問が明記されている国・大学は複数あります。面接では、医学知識そのものよりも、次のような観点が見られる可能性が高いです。
- なぜ医学を学びたいのか
- なぜその国・大学を選ぶのか
- 英語で医学を学ぶ準備ができているか
- 長期間の海外生活に耐えられるか
- 患者対応や多国籍環境に適応できるか
- FoundationやPre-medを経由する場合、その意義を理解しているか
ラトビア・マルタ・オランダでは、志望理由書やCV、推薦状と面接が組み合わさるため、単に成績が良いだけでなく、 「なぜそのルートを選ぶのか」を言語化する準備 が重要です。
予備コース・Foundationは必要?
予備コースは、欧州医学部を目指すうえで非常に重要な選択肢です。ただし、 「全員が必ず通るもの」ではありません。
予備コースが有利になりやすいケース
- 高校で生物・化学・物理の履修が十分でない
- 英語で理科を学ぶ経験が少ない
- 医学部入試の形式に慣れていない
- 現地での生活や学習環境に先に慣れたい
- 直接入学よりも段階的に進みたい
予備コースを慎重に検討すべきケース
- すでに理科科目の学力が高い
- IELTS/TOEFLなど英語資格が十分
- 直接出願で合格可能性が高い
- 学費と期間を抑えたい
- 予備コース修了後の進学条件が厳しい場合
ハンガリーやチェコでは、Foundation Programが理科・語学の補強として機能します。マルタではFoundation Studiesを修了して医学課程へ進む構造が明確です。オランダではEUCの3年間がPre-med的な位置づけで、その後Erasmus MCへ進むには成績とオランダ語力が求められます。
日本人受験生が出願前に確認すべきチェックリスト
欧州医学部の出願では、国ごと・大学ごとの違いが大きいため、次の項目を必ず確認しましょう。
どの国が自分に合う?タイプ別おすすめの見方
🗣 日本語サポートを重視するなら
ハンガリーやチェコの一部は、HMU・CMUのような日本語対応の窓口があるため、出願準備の不安を減らしやすいです。
📨 直接出願で挑戦したいなら
ラトビア、マルタ、オランダ、スロバキア、ルーマニアの一部は、大学公式サイトや出願ポータルから直接出願する形が中心です。英語での書類準備や面接に自信がある人に向いています。
📄 書類審査を活かしたいなら
ルーマニアの一部大学では、書類審査中心の選考があります。高校成績や英語資格が強い人は検討しやすいルートです。
🌍 語学を含めて長期的に準備したいなら
フランス、オランダ、マルタは、単なる医学部入試というより、 語学やFoundation課程を含む長期ルート として考える必要があります。
まとめ:欧州医学部入試は「国選び」より先に「制度選び」が重要
欧州医学部を目指すとき、多くの人はまず国名や大学名から比較しがちです。しかし実際には、最初に見るべきなのは 「自分に合う入試制度かどうか」 です。
自分に問いたい6つの質問
- 事務局経由で安心して進めたいのか
- 大学に直接出願して自力で進めたいのか
- 筆記試験で勝負したいのか
- 書類審査や英語資格を活かしたいのか
- 予備コースで準備してから進みたいのか
- 現地語を学ぶ覚悟があるのか
同じ「欧州医学部」でも、ハンガリー・チェコ・ルーマニア・ブルガリア・スロバキア・ラトビア・マルタ・オランダ・フランスでは、出願ルートも試験内容もまったく異なります。
だからこそ、志望校を決める前に、まずは入試制度を比較し、自分の学力・語学力・準備期間・予算・将来の進路に合ったルートを選ぶことが大切です。
欧州医学部受験は情報戦です。 早めに制度を理解し、自分に合ったルートを選ぶことが、合格への第一歩になります。